「夢の再生医療」実現間近 iPS細胞実用化へ研究急速に進展<SankeiBiz 10月9日(火)8時15分配信>
京都大の山中伸弥教授がヒトiPS細胞の樹立を発表してから間もなく5年。「いずれはノーベル賞確実」とされたが、再生医療の研究は実用化に向けて想像以上のスピードで進んでいる。来年度は世界初の臨床研究が日本でスタートする見通し。ビジネス面においても、「夢の再生医療」の実現が目前に迫っている。 iPS細胞を使った再生医療は、まず安全なiPS細胞を効率よく作製する技術の確立が必要だ。山中教授が当初開発した作製法は、体細胞に導入する遺伝子のうち1つはがん遺伝子で、iPS細胞の作製効率もヒトの場合で10%程度と低かった。この問題を克服するため、山中教授らは昨年、がん遺伝子を別の遺伝子に置き換える方法を開発。作製効率も40%以上に向上したため「魔法の遺伝子」と名付け安全性を大きく向上させた。 iPS細胞から目的の細胞を分化・誘導する技術も進展しており、すでに肝臓や心筋、神経など多くの細胞で成功。さらに京都大は今月、マウスのiPS細胞から卵子を作製し、体外受精で子を出産することに成功したと発表した。 全身の細胞がiPS細胞に由来する個体もすでに誕生しており、iPS細胞に全ての組織や臓器を作り出す能力があることを証明した。再生医療の対象は心筋梗塞など幅広いが、その中で臨床応用が最も近づいているのは、光を感知する網膜の一部が加齢に伴って障害を受け、視力が極端に低下する「加齢黄斑変性」という目の病気だ。 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)は、すでに動物実験で基礎技術を確立。患者で安全性を確かめる臨床研究を年内にも厚生労働省に申請し、来年度からの実施を目指している。実現すれば、iPS細胞による世界初の治療となる見通しだ。 iPS細胞は再生医療だけでなく、病気のメカニズム解明や医薬品の開発にも役立つ。患者のiPS細胞から病気に関係する細胞や組織を作り、健康な人との違いを調べたり、薬の効力や副作用の確認に使えるからだ。創薬での利用を念頭に、iPS細胞から作った肝細胞の販売も始まった。 山中教授は、こうした過去5年間の急速な研究の進展について「想像よりもはるかに早い。ここまで進むとは思っていなかった。すぐには間に合わない病気も多いが、いくつかの病気は10年以内に再生医療の臨床試験を始めたい」と語っている。 |
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