河北新報[社説]障害者制度改革/開かれた議論を土台に<2010年01月25日月曜日>
障害者自立支援法に代わる、新しい福祉制度の設計を議論する「障がい者制度改革推進会議」が、政府内に発足した。委員24人中、14人が障害者と家族たちだ。初会合で福島瑞穂内閣府特命担当大臣は『私たち抜きに私たちのことを決めないで』という障害者運動のスローガンを示して「改革のエンジン部隊に」と期待を込めた。 自立支援法が「障害者の意思を十分踏まえずに施行され、混乱を招いた」と批判されたことを考えれば、当事者らの参加は重い意味を持つ。開かれた議論から、新しい制度の土台が築かれることを望みたい。 軌を一にして、同法撤廃を求める全国14地裁の違憲訴訟が、和解に向け終結する見通しとなった。原告団と長妻昭厚生労働相が交わした基本合意では遅くても2013年8月までに廃止し、新たな福祉法制を実施するとしている。 06年施行の自立支援法は、障害の種別によらない一元的な福祉サービスの提供を定めたが、利用料の1割を本人が支払う「応益負担」の方針を導入したことで大きくつまずいた。公的サービスを受け、健常者並みの生活に近づく障害者の権利と、それを「利益」とみなす国の考え方とは、そもそも相いれない。批判を受け、国は負担軽減措置を講じた結果、自己負担分は平均数%に抑えられている。だが、多くのサービスを要する重度障害者ほど重い負担を課せられる制度に変わりはない。 厚労省の昨年の調査では、法施行後、利用者の87%が負担増となり、負担額が授産施設などの賃金を上回ってしまう人は5割超に増えた。これでは、自立や社会参加はおぼつかない。 推進会議は、障害者基本法の抜本改正、民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた障がい者総合福祉法制定に向けて、基本方針を夏までに取りまとめる。障害の定義、自立の概念など本質論に始まり、新しいサービスのあり方や雇用、所得保障、バリアフリーまで福祉施策を幅広く検討し直す。 利用者負担については、自立支援法施行以前のレベルを上回らないことなどが目安になる。一方では、障害者の対象に発達障害や難病患者も含め、制度の谷間をなくす手厚いサービスも視野に入れている。 これらの実現には、より多くの財源を要する。だが、10年度予算案では、現行制度での利用者負担軽減のため厚労省が概算要求した290億円の費用ですら大幅削減された。新政権の手法には既にきしみが出ている。福祉のコストを誰がどのように負担するかという問題は、自立支援法廃止後も最大の壁として残るはずだ。政府は国民的合意形成に向け、しっかりと推進会議をリードする責任がある。 |