脊髄損傷の新薬治験、阪大など2019年から <2017年12月25日>
脊髄損傷の治療を目指し、大阪大などは2019年から、新たに開発した薬を患者に投与する臨床試験(治験)を始める。まずは、背骨の中を走る脊髄の中枢神経ががん転移による圧迫で損傷し、手や脚が動かなくなった患者で安全性や効果を確認する。米国でも製薬会社による臨床試験が計画されており、外傷性の脊髄損傷の治療も含め、5年後の実用化を目指す。脊髄損傷は、事故などで脊髄の中枢神経が傷つき、手や脚がまひする。国内外で治療法の開発が進められているが、有効な治療法はまだ確立していない。大阪大の山下俊英教授(神経科学)は、傷ついた神経の修復を妨げるRGMというたんぱく質に着目。このたんぱく質の働きを抑える「RGM抗体」を田辺三菱製薬(本社・大阪市)と共同開発した。京都大霊長類研究所で、重度の脊髄損傷を負った直後のニホンザルにヒト用の抗体を投与したところ、4週間後にまひした手が動くようになった。約3か月後には小さな隙間に入った餌を指で取り出す細かい作業もこなすなど、損傷前に近い状態まで運動機能が回復したという。日本での臨床試験は、大阪国際がんセンター(大阪市)で行う。がん転移でまひが出た患者5〜10人の血管に抗体を注射し、約1年かけて安全性や効果を検証する。日本脊髄障害医学会の1990〜92年の調査では、国内の脊髄損傷の患者は10万人以上で、新たな患者は毎年約5000人と推計している。山下教授は「ペンを握ったり、コップを持って水を飲んだり、つえで歩いたりできる程度まで、まひが回復するのでは、と期待している」と話す。京都大の伊佐正教授(神経生理学)の話「サルなどの動物実験で慎重に効果が確認されており、人においても有望だと考えられる」 |
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