いろはのい:障害者福祉 原則無償化、課題は財源 <毎日新聞 2011年9月14日 東京朝刊>
内閣府の障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会が8月30日、今の障害者自立支援法にかわる「障害者総合福祉法案」の骨格になる提言をまとめました。同部会の委員55人の大半が障害者団体代表などとあって、提言は障害福祉サービスの利用を「原則無償」とするなど、給付の大幅底上げを打ち出しました。ただし財源は見当たりません。厚生労働省は提言をどこまで新法案に反映できるか、手探りを続けています。【石川隆宣】 現行の自立支援法では、サービス費用の原則1割を障害者本人が負担します。しかし、障害が重いほど負担が増えるので、06年の施行時から不満が出ていました。08年以降、全国14地裁で計71人の障害者が「自立支援法は憲法が保障する生存権を侵害している」として国を相手に訴訟を起こしました。 自公政権は裁判で争う姿勢でした。それが09年衆院選でマニフェスト(政権公約)に「障害者自立支援法廃止」を掲げた民主党が政権をとり、政府方針が変わりました。10年1月には原告側と「速やかに現行制度を廃止し、遅くとも13年8月までに新制度を作る」ことで合意し、訴訟を終結させたのです。そして政府は新制度づくりに乗り出す一方、今年7月には行政側に共生社会実現に向けた努力を求める「改正障害者基本法」を成立させました。
◇新法成立目指し その基本法を具現化するのが、自立支援法にかわって、12年の通常国会で成立を目指す障害者総合福祉法案です。さらに13年には障害者差別禁止法の成立も考えています。これらが施行されれば、06年に国連で採択された障害者の権利や尊厳を守る「障害者権利条約」批准の国内環境が整います。 厚労省によると、現行サービスを受けている人は約61万人。一方、障害のある人は約750万人と推定され、サービス利用者は1割未満です。介護保険を使っているために利用していない人などもいますが、それでも多くの障害者が家族に支えられている現状が浮かびます。政府は新法案により、政策の基本を「自己責任・家族責任」から「社会的・公的な責任」に切り替えようとしています。 この観点からも、利用者負担のあり方は新法案の焦点でした。提言の当初案は手話や点字などコミュニケーションの支援、住宅のバリアフリー化、社会生活を送るための移動費用など6分野の支援を無料とし、「公的責任」を前面に出していました。 ところが、無料化には賛否両論が出ました。事故で首から下を動かせなくなる障害を負った、全国脊髄(せきずい)損傷者連合会の大濱眞副理事長は、部会の中で無料化に異論を唱えた一人です。「理想は無料だが、財政状況を考えると難しい。むしろ、必要なサービス量を提供する方が先だ」と訴えました。最終的に提言は「原則無償」との表現に落ち着き、高所得者には負担を求めることも盛り込まれました。
◇予算倍増も提言 日本の障害福祉予算は潤沢とは言えません。国際比較(07年)をすると、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、データのない米国とカナダを除く32カ国中18位です。そこで提言は、予算を加盟国の平均水準まで引き上げることも課題に挙げました。 ただ、それには予算を07年度の2倍、2兆2051億円にすることが必要です。厚労省は提言の全面実現には慎重で、小宮山洋子厚労相は「予算の枠があるので、しっかりと協議したい」と述べるにとどめています。しかし、推進会議の議長代理も務める藤井克徳・日本障害フォーラム幹事会議長は「障害者問題の政策はその国の人権意識をみるバロメーター。雇用創出など経済効果や社会に与える好影響もある」と指摘しています。 |
|