東日本大震災:グループホーム型仮設住宅、規模限定で用地確保できず/岩手 <毎日新聞 8月28日(日)11時21分>
◇社福法人、整備申請を断念 東日本大震災で被災した高齢者や障害者向けの「グループホーム(GH)型仮設住宅」を巡り、県が規模の大きい「定員10人」のタイプに整備を限ったため、地元の複数の社会福祉法人が用地確保ができないことを理由に、整備申請を断念していたことがわかった。一方、宮城県はニーズに合わせ定員に幅を持たせており、専門家は「岩手も柔軟な対応で建設できたはず」と指摘している。【市川明代】 GH型仮設住宅は、バリアフリー対応や共同生活向きの間取りが特徴。国が示す「標準プラン」を基に各県が定員や広さなどを決め、社会福祉法人の整備申請を受けて建てる。適当な公有地がないなどの場合、法人が自ら用地を探さなければならないこともある。 県建築住宅課によると、国からは大小2通りのプランを示されたが、整備のスピードや効率を優先し、一つのタイプに限定。5月ごろ「定員10人、用地は32メートル×9メートル」と決め、高齢者向けと障害者向けを各6棟建設した。 入居間近だった定員5人の障害者GHを津波で流された、釜石市の社会福祉法人「豊心会」の菊池久仁彦施設長は「大型のものが収まる土地は見つかるはずもなく、申請はあきらめた」と話す。「早く障害者施設から出たい」「介助者が亡くなったので利用したい」といった要望が相次いでいるが、再開のめどは立たないという。 定員5人の障害者GHを失った大船渡市の社会福祉法人「大洋会」は、定員5人の小型タイプなら建つ用地を県に示したが認められなかった。県が建てた定員10人タイプのうち、1棟を運営するあすなろ会(陸前高田市)の西條一恵施設長も「大きな用地が必要だったため、地権者に無理を言って用立ててもらった。小さいものを建てられるよう融通を利かせてほしかった」と話す。 GHの調査研究をしている「日本グループホーム学会」(事務局・横浜市)によると、GHは高齢者向けなら定員10人前後、障害者向けは同4〜6人が一般的。宮城県は定員9〜10人と5〜7人の複数のタイプを建てている。県内には一般の仮設住宅に空きが出ており、室津滋樹事務局長は「GHへの活用を検討すべきだ」と話している。 ………………………………………………………………………………………… ■ことば:◇グループホーム 少人数の認知症高齢者や障害者が、介護サービスや生活援助を受けながら共同生活する住まい。主に介護保険法に基づく認知症高齢者グループホームと、障害者自立支援法に基づくグループホーム・ケアホームとに分類される。障害者グループホームは地域における自立生活を支える目的が大きいため、三陸沿岸部では市街地の一軒家を借りるケースが多い。岩手、宮城の2県では計18カ所が津波で流失または地震で全壊した。 |
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